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革靴を履いたシンデレラ

第2章 舞踏会の心得


十歩も歩かないうちに、シンデレラに歩み寄った女性が話しかけてきた。
都会というだけあり彼女らは洗練されたドレスや髪型をしている、と彼は思った。

「あ…ああの…っ!?」

一人の女性が話しかけようとした瞬間。
ドレスの裾に躓いて倒れそうになった彼女を、シンデレラが彼女のウエストを支えて踊るような動きで受け止める。

「気を付けなさい。 麗しいキミに触れられるのなら、今宵しばし月の蔭った時に」

官能的に眉をひそめ、月よりも鋭く見つめる彼の視線に、女性は真っ赤になってふらりと座り込んでしまった。


……これをファーストペンギン効果というのだろうか。

さりげなくその光景を固唾を飲んで見守っていた女性たちは、一斉にシンデレラの元へと駆け寄った。
それはまるで、あたかも咲き誇る大輪の花に疾走する蝶のごとく。

かつて、実業家の父と遠い異国の美しい女性であった母という両親を持ち。
また優秀な義姉たちから英才教育を受けたシンデレラ。
彼の豊富な知識から生まれる巧みな弁舌。
加えて女所帯の末っ子として育った彼は、女性との会話のツボを心得ていた。

シンデレラの、相手の感情に沿った相槌や共感の言葉は女性たちをいたく感動させるのであった。


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