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革靴を履いたシンデレラ

第1章 シンデレラの優雅な一家


三年前に亡くなった、シンデレラの父親は結構な資産家だった。

未亡人であったアンリの母親が再婚をしてから、家の暮らし向きは良くなったものの。
実は亡くなった義父は借金を抱えていたと発覚し、家は元の貧乏生活に逆戻り。

生前の父親が購入した家は実質、維持するだけで手一杯の空っぽの状態であった。


かくして病弱で寝込みがちの母とアンリを含めた姉二人。
そして亡き父親の連れ子であるシンデレラとの生活が始まったわけだが。

この義弟ときたら。

ろくに働かないどころか、年中こうやってどこぞの女をはべらせては、人目もはばからず遊び倒している毎日なのである。
そしてどうでもいいが猫好きである。

歌を止めたシンデレラが女たちの申し出に口を開いた。

「君たち、家を手伝ってくれるのは有難いが。 俺もたまには真面目に働かないと」

珍しく殊勝な言葉を彼から聞き、ん? とアンリが目をあげる。
湯に浸かっている女たちが羨望の眼差しで彼を見ている。

「シンデレラ様ったら、なんて勤勉なのでしょう!!」

「平民が働くのは当たり前のことだけど」

とアンリがツッコむ。

「三日に一度のトレーニングかな。 でないと、こうやってキミらを存分に可愛がれないから」

「イヤそこは毎日真面目に働こうか」

姉の呟きを無視し、シンデレラが両腕で彼女たちを抱き寄せる。

すると天井を仰いだ女が甘い喘ぎを漏らした。

「あっ……シンデレラ様あ…そこ、は」

「………」

アンリは絶句し、二度音を立てて扉を閉じた。



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