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革靴を履いたシンデレラ

第4章 シンデレラの落とし物


そんな中、舞踏会場の屋敷の令嬢が隣国に嫁ぐという知らせを受けた。

『相手がいるから』

あれはそういう意味だったのかと、シンデレラはようやく理解した。

彼女の境遇に同情をしていた彼はほっとしたが、直後、心のどこかで感じていたささくれが、チクリチクリと胸を刺す。
彼女とのあの甘美な夜に思いを馳せ、飴玉でも転がすように余韻を味わう。 そんなことをする気にはなれなかった。
それでも困ったことに体だけは彼女を覚えており、脳内で発酵し続ける欲情に頭を悩ます。
そしてその後に抱いた別の女性は、彼の欲情を助けるに何の役にも立っていなかったことに気付いて愕然とするのであった。

なぜなら彼はリーシャに言ったのだ。

『欲のためだけなら、マスターベーションで事足りるのだし』

シンデレラが今までしたきたことは全くそれと大差がない。 彼は自身のそんな発言をひどく恥じた。

『貴方は今まで人を好きになったことがないのかしら。 それとも、自分は棚にあげて、お相手の嫉妬を厭う身勝手な殿方の、どちらのタイプかしら?』

彼女の言葉は真実。 取り残されたベッドで悪態をついた、思えば自分は無様としか言いようがなかった。



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