テキストサイズ

革靴を履いたシンデレラ

第4章 シンデレラの落とし物


あの場でご馳走に気を取られてはいても、ルナはぬかりなく家族の様子に気を配っていたのた。
シンデレラとリーシャのことをまずアンナに報告したのはルナの仕業である。


彼女はぎこちない足取りでルナの前に立ち、目線をさげておじぎをした。
いかにも線の細い、深窓の令嬢、といったリーシャの風情だった。

「突然申し訳ございません。 本日は私は」

「し、シンデレラは今居ませんが、なんなら、ええと? 家の中でお待ちになりますか」

(それとも見た目だけの、実はド貧乏な家ってバレたらやばいかしらね?)

どうやらシンデレラとはやんごとなき関係らしいし。と、ルナは考えを巡らせる。

「………ご不在ですか?」

リーシャの顔がさっと陰ったのを見て取り、ルナが両の手のひらを顔の前でぶんぶん振る。

「あ、あっ。 でも、すぐに帰って来ます。 どうぞ、中へ!」

「ありがとうございます………ですが、私はもう行かねばなりません。 ではどうかこれを、シンデレラ様にお渡しください」

ルナは手のひらほどの、装飾が施された小さな箱を受け取った。

「………? お家に戻られるのですか」

ぐるりと玄関先を見渡してルナは尋ねた。
リーシャは季節に合わない外套を羽織っているし、加えて、馬車に積んである荷物が気になったからだ。

リーシャが少し迷うように瞳を彷徨わせた。

「いいえ…もうこちらには滅多に戻って来ません」

ルナは彼女の目の翡翠色が、他に見たことがないほど薄いのに気が付いた。

「………では、私はこれで」

別れを告げたなりに、背を向けようとするリーシャの手を、慌てて取って引き留める。

「ちょっと待って。 とにかく、あの子と話して欲しいわ。 だから来たのでしょう? 弟に会いに」


ストーリーメニュー

TOPTOPへ