テキストサイズ

革靴を履いたシンデレラ

第4章 シンデレラの落とし物



「こら、お前。 お嬢様に気安く触るな」

「あなたこそ触らないでちょうだい!」

リーシャの傍にいた、従者らしき男が二人の間に割って入ろうとしたのを、ルナがぴしゃりと払い除けた。
その後にリーシャを見据える。

口には出さなかったがルナは『ここで逃すともうシンデレラと会えないのでしょう。 それでもいいの?』そんな思いを表情にこめた。

(だってこの人ってば、『行かなければならない』所にちっとも行きたくなさそうなんだもの)

シンデレラと同様、はたから見ても彼女の反応は分かりやすいぐらいだった。

リーシャはルナに手首をしっかりと握られたまま、目を落として困ったように眉を寄せた。
そして、ふと口角を上げて笑顔を浮かべた。

「どうにもならないことです。 私は彼に届け物をしに来ただけなのです………不躾かも知れませんが、シンデレラ様には私が直接ここに来たことは内緒にしておいてください」

「っだけど!」

ルナの口から漏れかけた言葉をリーシャは遮り、身体を寄せて彼女にだけ聞こえるように声量を下げた。

「………」

無言のままルナが手を離すと、リーシャは優雅にドレスの端を取り一礼をする。

「どうか、ご家族ともに今後ともお体にご自愛くださいませ。 ごきげんよう」

彼女が上品な微笑みを浮かべて馬車に乗り込んで去っていく────ルナはその様子を見送りながら、何とも言えない表情を浮かべていたのだった。



ストーリーメニュー

TOPTOPへ