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革靴を履いたシンデレラ

第5章 魔女のタマブクロモドキ



「クレ」
「うわああああああん!!!」

突如火がついたように号泣し出すクレアに、何事かとアンリとルナ、義母、それからクレアの父母があっという間にすっ飛んできた。

「こんな夜更けに何ごと?」

「まあクレア、どうしたの!?」

「ふあああっ、おとっ…おとーさあああん!!」

泣きじゃくるクレアが父親に抱きつき、彼が困った顔をした。

「ええ…あの子にイタズラでも」

「死んじゃいやあああああっ」

「……は?」

クレアの両親は顔を見合わせ、そのまま泣き続ける我が子を不可解な様子で抱いて家に戻って行った。


「……シンデレラ、温かいココアをいれるわ」

アンリが彼の荷物を肩から外し、彼の頭をくしゃりと優しく撫でた。

義母が彼の前にしゃがんで柔らかく腕に抱きしめる。

「ごめんなさいね、シンデレラ。 あなたの気持ちを考えられなかった、不甲斐ない母親の私を許してね」

声を堪えて泣き続ける彼と、もらい泣きしているルナを、義母は長い間抱きしめていた。



幼少の出来事を思い出し、もしかするとクレアがいなければ、自分は今ここにいなかったのかもしれない。 そんなことをシンデレラは思う。

あの時のクレアに自分が重なる。

最近の寒さのせいか。 義母は現在容態が思わしくなく入院中である。
……そうやってここ五年は入退院を繰り返している。



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