
革靴を履いたシンデレラ
第5章 魔女のタマブクロモドキ
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一方、シンデレラの自室からダイニングに降りてきた寝起きの彼とクレアは険悪な雰囲気でいた。
「頭が痛い……クレア。 お前にはまだ、助平と言われるほどのモノは無いだろう?」
むっつりした顔でシンデレラに至極真面目に指摘され
「うるさいわ!!」
クレアが顔を真っ赤にして言い返す。
シンデレラの家と近所の、ジェイド家のクレアは幼い頃からここに慣れ親しんでいた。
甘いココアが入ったカップを彼女の前に置き、アンリが弟をたしなめた。
「シンデレラ、クレアは今、婚姻準備で忙しいの。 からかっちゃ駄目よ」
「はっ…婚姻用品よりも、先に色気を買ったらどうだ? かろうじて女だと分かる髪はどうした」
鼻白んで椅子から立ち上がり
「こんなまな板が結婚なんぞしても、子にやる乳など」
クレアの上着の手前をくいと引いたシンデレラが中を覗き込む。
「ぎゃあああ、変態!!!」
小柄なクレアはスカートなども履かず、少年といって差し支えない容姿をしていた。
ただ最近、腰までの見事な金髪の巻き毛を切ったようで、今は肩にかかるぐらいしかない。
