
革靴を履いたシンデレラ
第5章 魔女のタマブクロモドキ
ダーマは一瞬目をしばたたかせ、自分に向かってくるルナを見てあっけに取られた。
「……え、え。 まさか、あの美形揃いを?」
「手加減はしたわ。 みんな何だか操られてるみたいな目をしてて気の毒だったから」
ちなみにルナも他人の顔面をさほど気にとめない人物である。
と、シンデレラが取っているダーマの手を払い除け、ぐいと彼女の襟元をつかんで捻る。
「ぐえっ……!???」
絞められたニワトリのごとく鳴いたダーマが目を白黒させて手足をバタつかせる。
「話は聞いたわ。 シンデレラ、だらしないわよ。 クレアを慰み者にされたというのに、何てザマなの!」
普段温厚なルナは明らかに怒っていた。
「く、苦し……シンデレラ、には強力な、呪術…を……そ、そうだわ。 この女を…抑えなさいっ!」
必死の形相でシンデレラを横目で見て命じる。
「断る。 つけ加えれば姉さん、俺じゃこの女をどうにかするのは無理だ」
二人が彼に驚いた顔を向け、ルナは怪訝そうに眉を寄せた。
「へ……?」
「シンデレラ?」
ふー、とひと息ついたシンデレラが立ち上がり、一歩前に進んでパンッとダーマの横面を平手で引っぱたいた。
「はああああっ…♡♡」
ダーマが恍惚とした表情で何やら奇妙な声をあげる。
気持ち悪さにルナが手を離すと、ダーマはそのままヨロヨロと床に崩れ落ちて座り込んだ。
「俺はそんな怪しい術が効くほど単純な頭じゃないんでね。 クレアの話を聞き出したかっただけだ。 それから姉さん、この女は真性のドMだぞ」
「ど、どえむ……?」
「見目のいい男から嬲られるのが大好きってこと。 という訳で、俺は姉さんを待っていた」
