
革靴を履いたシンデレラ
第1章 シンデレラの優雅な一家
シンデレラは皿の上の食材を丁寧に切り分け優雅な動きで口に運んだ。
ただの芋でも彼が食すとなぜか御馳走に思えるのが不思議である。
「ほう……舞踏会?」
「そうよ。 来月に開かれる隣町の舞踏会へみなで行かなくて? クリスマスをたまに外で祝うのも悪くないし、貴方も今年成人を迎えたのだから、そんな場にも慣れないと」
「別にどこだろうと慣れなぞは必要ない。 俺が臆することなど有り得ないのだから。 これも姉君たちの教育の賜物だ。 感謝している」
彼が膝に乗っている猫たちを愛でながら眩しく微笑した。
「まあシンデレラったら。 今なら熊だって二人で倒せるものね」
感極まったように口に両手を当てる妹のルナ。
「………」
学問は姉から。
体術は妹から。
異様に飲み込みの早いシンデレラは、今やアンリが読めない学術書までスラスラと読めるようになった。
だが一方で、弟はなんというか。
………ぶっちゃけ、かなり傲慢な人間に育ってしまったようにも思える。
アンリは感謝されても心から喜びきれない自分の感情について考えながら、言葉を加えた。
「なんでも舞踏会では、名だたる伯爵令嬢や年頃の美しい娘も姿をあらわすとか………?」
フォークを持つシンデレラの手が止まる。
