
革靴を履いたシンデレラ
第1章 シンデレラの優雅な一家
「隣町のフォードリアは、ここよりも王国に近いし都会的だものね。 今頃の季節は街も美しく飾られているでしょう」
軽く三人分の芋を皿に盛り、ひっきりなしに頬を動かすルナが口を添える。
彼女は狩猟と料理が得意だが、底無しの大食らいでもある。
そうは言っても、アンリは悩んでもいた。
有り余る魅力や才能を持ちながらも、贅沢できらびやかな世界に興味を示さず、慎ましい性格も弟の美点なのである。
(私が浅ましすぎたわ。 身内を利用して、良い家柄の人間と関係を持とうだなんて)
アンリが小さく息を吐き、「この話は無かったことに」と言うと「いや」とシンデレラが姉を押しとどめた。
「美しい女性が待っているのなら、俺が行かないのはそれこそ無作法というものだろう」
額に指先を添え、悩ましげに首を横に振る。
「ン、ここがいいのか? お前の弱い所はここか。 ふふ…そう妬くな。 よしよし、順番に可愛がってやるから」
足元に擦り寄ってくる猫を一匹一匹膝に乗せては愛撫をし、彼のその様子は女性に接する態度となんら変わりはない。
そんなシンデレラを眺め
(やっぱり私は彼の育て方を間違えたかもしれない)
アンリは思うのだった。
