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獣人さんが住む世界で大っきいカレに抱き潰されるお話

第2章 夢の世界の入り口は


『佐藤琴乃様ですね』

門を入ってすぐ私を待っていた人がいた。
両脇にいた門番もだが、帽子を目深に被った獣人も大きな人だった。
私など彼らの腰の位置がせいぜい。
威圧感が半端ないが、やっぱり獣人とは逞しくて素敵だ。

『職場へご案内します』

『は、はいっ!』

その人が通行証のようなものを渡してくれ、私はそれを首から下げて彼の後に続いた。
向こうにもう一つ大きな扉があり、一本の道がそこを繋いでいた。

『あの、今日は私一人ですか? 向こうの研修では、確か私の他に四人の人たちがいて』

『……嬉しそうですね』

『はい? ええ、もちろんです!』

振り返り、腰を曲げて私の顔にまじまじと見入る。
金色を背景にして射るような漆黒の瞳、彼の真っ直ぐな眼差しにドキリとした。

『それに、礼儀正しい。 貴女の目は俺たちを見下していない』

門の内側はコンクリートの歩道でぐるりと囲われていた。
宿舎のような建物の周りには植木などが植わってあり、当たり前だが空には陽が登っている。

ただ、言いようのない違和感を感じた。
こちらを見ている二つの門の見張りとこの人の他に、誰の姿もないのだ。

『合格だ』

彼の口が動いて直ぐ、首の後ろに衝撃を感じて目が眩んだ。
次に目覚めた時の私はその獣人に組み敷かれていた。

それまで期待に胸を膨らませていたというのに。
私の初めての仕事。
私の夢。

早く子供たちに会いたい───────


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