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獣人さんが住む世界で大っきいカレに抱き潰されるお話

第2章 夢の世界の入り口は

それはそうと。
居住まいを正した私は真面目な顔を作ってシンに向き直った。

「……ねえ、シン? あの人…セイゲルさんが、私の好物なんかを知ってるのはシンのしわざ?」

「はい。私はたびたびここに通ってましたから。さらに言えば五年前、試験概要の冊子を郵便ポストに入れたのも私です。ご主人と出会った時を覚えていますか」

覚えてる。
両親が事故で死んだのは中学生の時。
施設学校の宿舎に入る予定だった私はなぜか途中でそれが取りやめになり、一人で暮らし始めた。

心細く過ごしていた高校時代。
学校帰りのある晩、私は痴漢に襲われかけた。
それを助けてくれたのがシンだったのだ。

「家族だと思っていたのに、私を騙してたの?」

いつから?
この目的で?
宿舎に入らなくなったのも……もしかして襲われそうになったのも?

「ご主人、それは違います。 私は」

「ねえ、わ、私の親は……本当に事故で」

「ご主人!」

強い口調で眉間に皺を寄せたシンに私は口をつぐんだ。
さすがにそれは無いと頭で分かっていても信じられる気になれなくって、つい失言をしてしまった。

「私の口からお話し出来ることは多くはありませんが、確かにすべてが偶然だったという訳ではありません。 ですが、ご両親の不幸については、私たちは決して関わりはありません」

「だよね、ごめんねシン」

悲しそうなシンの顔を見てたら一緒になってしゅんとしてしまう。

「それに、こう言ってはお言葉かもしれませんが……普通の女性ならば、自分の倍もある獣人に突然行為を強要されたら、今も恐怖で震えていることでしょう」

「ん、何が言いたいの?」

普通に怖かったよ?
私はシンに向かって頭を傾げた。
ベッドの上で目が覚めた時は一瞬、噛み付かれるかと思っちゃったもの。

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