テキストサイズ

獣人さんが住む世界で大っきいカレに抱き潰されるお話

第2章 夢の世界の入り口は

こちらにも普通に通話の手段はあるらしい。
私がしぶしぶそれを手に取り、すると画面には、仏頂面50パーセント+呆れ顔50パーセントのセイゲルさんが映っていた。

「お前は俺の話を聞いていなかったのか?」

「聞いてましたよ。その上で納得がいきませんでしたので」

セイゲルさんが片手で顔を覆う。
その後で、はあああああ、と長いため息が聞こえた。

「……そうだな。 こっちもな、ええと。 めんどくせえ、まさかそう来るとは。 さて、どうするか……一つ言っておくと、門番はお前を通さない。 もしも取り逃したら極刑だから向こうも必死だ」

「私だけでなく人権自体、無視って事ですか」

「秩序を守るため。 お前の所では全ての人間が自由か? 貧困や不幸な者はいないと?」

「それは個人の努力次第でしょう」

当たり前とでも言う私の口調に、セイゲルさんが思いがけず眉をひそめる。

「例えば生まれながらに障害を持つ者は? 少なくともここでは、そのような者も平等に暮らせるよう保障がある。 たとえ伴侶を持てなかった年寄りでもだ」

「で、でもだからって、人を縛って良い筈はありません」

「女を犯したり殺人をする者にもか」

「それは極論じゃないですか。 私は普通の人間や獣人の話をしてるんです。 それなら貴方こそ犯罪者でしょうに。 この家に連れ込む前に、私の同意を得たんですか?」

「連れ込んでからの同意は得た。 俺の腰にしがみついて足を絡めてたのは誰」

こっ、子供の前でしゃあしゃあと!
慌てた私が急いで彼に言葉を被せる。

「とっ、とにかく!!! 私は納得いきませんから!」

「……ふう、俺の嫁には困ったものだ」

セイゲルさんがヤレヤレとでも言いたげに首を横に振る。

「だから嫁とか勝手に」

「黙れまあ、いい。 シン」

「はい」

しゃがんだ私がシンと一緒にタブレットを覗き込む。

「琴乃の望み通りにしてやれ。ただしお前が付き添え」

「セイゲル様。それは真面目に仰ってますか」

眉を下げるシン。 心の中でガッツポーズを取る私。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ