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獣人さんが住む世界で大っきいカレに抱き潰されるお話

第3章 未婚獣人たちの慰みもの*

向こうでシンと誰かの微かな話し声が耳を掠める。
出るなら今だ。
それにしても、高さもある頑丈な壁。
ダイエットをしておいて良かったとつくづく思う。
スルリとそこを抜けた私は人間界の地面に手をついた。
人気もなく、ここも植え込みの陰になっているのは好都合だ。

「……ん、あれ?」

お尻が引っかかって抜けない?
もう少し……でもない?
見た目よりも分厚い壁の中身は案外狭かったようだ。

ぐいぐいと押してみる。

「………」

どうやら出れそうにもない。
これはもしかして神様のお導きなのかもしれない。
も、戻ろうかな……?
自分の心がグラグラと揺れる。

『お前は俺の女だ』

セイゲルさんの熱っぽい声を思い出して慌てた。
異性にあんな風に言われたのなんて生まれて初めてだ。

そもそも、私の好みやサイズが合うものを用意してくれてたのは、彼の優しさなんじゃないのかな?
我ながら現金だけれど、彼の気持ちを聞いた後では疑心が簡単に反対側へとひっくり返る。
彼の外見はモロ私のタイプでもあるし。

よしとりあえず戻ろう。

うん、と私は力強く頷いた。
ぐいぐいと今度は引いてみる。
が、すっぽりハマってしまったようで、向こう側にいけない。

しばらくとその場でジタバタし、しまいに私は全く動けなくなった。
……これはさすがにヤバいんじゃないの?

それでもそのうちシンが迎えに来てくれるだろう、そして何とか向こうから引っ張ってもらおうと、私は間抜けな格好でじっと待っていた。


「ハリス殿、これは一体……」

「フム、紛うことなき雌の尻だな」

すぐ背後、つまり獣人側で二人の男の声がした。
顔から血の気が引くのが分かる。

「どうやらここから脱走を図ったらしいな。馬鹿め」

二人の男性がボソボソ話し始める。
私のお尻の後ろで。

「わたくしは新人の身で、このような時はどうすればいいのか。 これは上層部に連絡ですかね?」

「そんなことをすればこの穴を見逃していた、我らが処罰を受けるだろう。 内々に済ますのだ。 女、それでいいな? バレればお前やお前の伴侶共々厳罰だ。 返事がイエスならば左足を上げろ」

冷や汗がダラダラ流れてくる。
私は迷いもせず左足のつま先を上げた。

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