獣人さんが住む世界で大っきいカレに抱き潰されるお話
第4章 →ひたすら雌の観察(仕事しろ)*
「────え、嫌だわ、そんなの」
唐突に閃いて、醒めた。
すっと正気に戻った頭を改めて左右に振る。
そんな環境で産まれる子供が、幸せなわけないじゃないの。
自分より可哀想な子供作ってどうすんのよ。
相変わらず背後では獣人が呑気に話している。
「もっとソレを塗りこんだらどうです?」
「ああ、そうだな」
「それにしてもあれですね。 今日のハリス殿はいやに明るいような」
「そりゃあ、お前もだろう?」
ぬりゅぬりゅ膣口に押し付けられる、熱の籠る太い先。
その感触にぞっとした嫌悪が背筋に走る。
「止めて、止めなさい!」
お腹まで息を吸い込み明確な発音で私が掛けた声に、動きがピタと止まった。
「わ、私の夫はセイゲルさんっていう人なの。 他の誰も受け入れたくない」
返答は無い。
「もし……もし、続きをしたら、訴えてやるから。 不幸な子供が出来るぐらいなら貴方たちも道連れにしてやるから!!」
「セイゲル……?」
「へえ……」
どこか呆けたようにトーマスさんとハリスさんが呟く。
「セイゲル!?」
続いて素っ頓狂に声が裏返るトーマスさん。
「ハリス殿!? この娘……いえ、この方は、貴方の」
「まあ…そうだな。 思ったよりも跳ねっ返りで困る。 トーマス、悪いがここは俺が収める。 代わりに今日、本来入るはずだった門番を呼び戻してくれるか」
「えっ、あ、は、はい!! ……あの、実は少しだけ変には思ってたんです。 なぜ高位である士官のハリス殿が門番を、とか。 こんな規律を破るようなことを、とか」
「ただの夫婦喧嘩とでも思ってくれたら有難い。 お前が組む相手じゃなきゃ出来なかった。 一生恩に着る」
「ハリス殿っ……!!! 新人とはいえ、何も知らず申し訳ございません。 この度は、ご結婚、おめでとうございました!!!」
大声で叫んだトーマスさんの声が遠くなっていく。
そのやり取りを、私は遠くの出来事のような気分で聞いていた。