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獣人さんが住む世界で大っきいカレに抱き潰されるお話

第5章 推されなれないものだから


溺愛、これはまさに溺愛なの!!!???

自分にこんな出来事が降ってくるとは思ってなかった。

「し、シン」

「はい?」

息苦しい胸を手のひらで押さえ、確信に似た気持ちをシンに伝える。

「わ、私、セイゲルさんに物凄く恋をしてると思うの!」

「……だから最初、言ったでしょうに」

呆れた口調でため息をついたシンが、自分の額の下辺りを前脚でつつく。

「私は初めから、ご主人がそうなると思っていましたよ。 私の頭には過去人間と獣人との、何百ものカップリングデータが詰まってますから」

犬って凄い。
女子力いわんや仲人力。

「……なぜ私に土下座しているのか分かりませんが。 セイゲル様は明け方近くまで、心配そうにご主人を見守っていました。 今朝は早くから勤務に向かいましたが、夕方に戻るまでくれぐれもご主人を安静にさせておくようにと。 それでもちろん、もう外になど」

「シン、私セイゲルさんのために、美味しいご飯を作りたいの。 街へ買い出しに行こう!!」

邪魔とばかりに包帯を外し、ばっと立ち上がった私が痛みを忘れて叫ぶ。

「………学習能力って言葉知ってます?」

それに心から嫌そうな顔を返したシンだった。





シンったら。
あれから無言で寝室を出て行ったと思ったら、彼らに告げ口なんて。

この家のリビングは一階にある。
私から見ればベッドみたいな広さの、ソファセットやローテーブルなどが置いてある開放的な空間。
そこで私はスツールに腰掛けていた。
私の解けた包帯を巻き直しつつ、獣人の二人が両隣でニコニコしている。

「もちろんダメですよ、琴乃様」

「そうそう、買い物はこっちの仕事。 また外出なんかさせてあとで叱られるのは僕たちですから」

言葉に詰まって何も言えない。
こんなことや食事の用意に洗濯、寝室の掃除……つまりこの家の正当なお世話係はこの、メロルくんとシリカくんである。

昨日のように、二人に迷惑をかける訳にはいかない。
私はセイゲルさんの傍にいることに決めたのだから。

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