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獣人さんが住む世界で大っきいカレに抱き潰されるお話

第5章 推されなれないものだから


「あの。 良かったら、私にも何かお手伝いをさせてもらえるかな?」

さり気なく提案をしてみると二人は驚いたように私と互いの顔を見合わせた。

「……それは、なぜでしょう?」

「だって何もしない生活なんて。 毎日どう過ごせばいいのか分かんないもの」

一応私には両親の保険金があったが、それは多額ではなかったため、学生時代からアルバイトをして生活してきた。
ある日突然、深窓のお姫様みたいに暮らせといわれても、どうしていいか分からない。

「琴乃様はセイゲル様の奥様となる身ですよ」

「そのための世話係として、ひと月前から僕たちが住み込みで雇われたのだし?」

昨日二人から話を聞いた。
それによるとセイゲルさんは元々は、あの門の間にある宿舎住まいだったという。
ただし結婚をすると、普通の獣人は家を持つものなのだと。

「琴乃様、軍隊とはこちらでは政よりも特権階級とされています。 その中でもセイゲル様とは若くして様々な実績を上げ、今は27歳にして指揮官も務める、上級士官でいらっしゃいます」

「そんなセイゲル様の家に就くことが出来たのは、僕たちにとって誇らしいことでもあるよね。 だから申し訳ないですけど……」

うんうんと頷き合う二人だった。
セイゲルさんが偉い人なのは凄いけど、私はいまいち腑に落ちない。
ちなみに彼の年齢は思っていたよりも若かった。

やがて私の手当てを終えたらしい二人が立ち上がる。

「ところで琴乃様。 昼過ぎに、体をお拭きになりますか? 入浴はまだ沁みそうですし、傷が化膿するかもしれません」

「あ、うん。 ごめんね、ありがとう。 お湯とタオルの場所を教えてくれたら自分で用意するよ」

ふと、シリカくんをじっと見つめる。
二人は襟付きのシャツを着ている。
ついでにまだ子供だからか膝下までの黒のズボン。
品がよくてとっても可愛い。

「ね、ねえ、シリカくんはお風呂は入らないの?」

「え?」

私の顔を見たシリカくんが何だか怯えた目をする。
だってお陰で襟元や尻尾など、彼らのそこかしこから垣間見える獣毛に、どうしてもムラムラしてしまうのだ。

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