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獣人さんが住む世界で大っきいカレに抱き潰されるお話

第5章 推されなれないものだから


……でも結局、シリカくんは逃げてしまった。
当たり前かもしれないが獣人は犬と違い、あまり他人との接触は慣れてないらしい。

今は寒い季節だがリビングの一面はガラス戸になっているので、日中の陽射しがさんさんと室内に射し込んでくる。
私はカーペットに座り、お風呂上がりのメロルくんのお手入れをしている最中だ。
メロルくんの方も、セイゲルさんに似た毛質かと思っていたら、指を差し込んで触れると柔らか。
やはりまだ子犬を思わせる。
洗ってあげるというのは断られた。
いくらまだ子供でもパンツぐらいは履かせて欲しいとの理由だった。

ドライヤーをかけながら乾かす、乾かす。
手で被毛をワシワシしてるそばからフワッフワになってきて、なんともうっとりした気分になってしまう。
その後で、目の荒いブラシで全身を梳き、細かいコームで整える。
一通りの道具は揃っているようで私は俄然張り切っていた。

「うわ、メロル。 ホントにお世話されてる!」

幸せホルモンのオキシトシンが分泌されまくりの私と、無の表情でうつぶせ寝しているメロルくんを指し、シリカくんがゲラゲラ笑う。

「シリカが逃げるからでしょう。 琴乃様がおっしゃるならまあ、仕方ないですし」

シリカくんより若干歳上のメロルくんは、柔和な顔付きと同じく、おっとりした性格らしい。

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