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獣人さんが住む世界で大っきいカレに抱き潰されるお話

第6章 甘えたいっ*

お尻と太腿を片腕で支えられ、おそらく昨日の抱っこポーズはこれだろうか。
背中にもセイゲルさんの逞しい二の腕があるので、安定感は抜群である。

広い肩に頭を置き、密着する体に顔を赤らめる。

「寝室……に?」

階段の方向へ歩き出した彼におすおず尋ねてみる。
改めて意識すると尻込みしそうになる。

「本当は子作りに励みたいとこだがな。 二、三日俺は別室で寝る」

……のに、無いなら無いで寂しいと感じる自分がおかしい。

「ど、どうしてですか?」

「単純に、お前が隣にいると手を出したくなるからだ。 怪我が治るまでは我慢する。 思えばお前を抱くと毎度気を失われてたな。 今後はちゃんと労るから、ゆっくり慣れてってくれると嬉しい」

そんな話に何も言えずドキドキしていると、セイゲルさんが口を閉じて、じっと私を見つめていた。

「………?」

そこに甘いものはなく、なんだろう?
圧といえばいいのか。
あっ! 私は心の中でポンと手を打った。

「え、はい。 コホン。 私、も……そう思います。 慣れるように頑張りたいです。 そうやって、色々考えてくれるセイゲルさんは大人ですね」

これは褒め要求とみた。
ついでに、ついでに今回はオプションをつけてみた。
ほっぺたに(正しくは頬毛に)軽く口を付ける。
するとセイゲルさんの黒目が大きくなった。

「驚いたな。 てっきり少しぐらいは幻滅されてるかもと思ってた」

「そ、それは……無いです、よ?」

昨日のことを思い出してどんどん顔が熱くなる。
私の膝の裏に添えられていた手に、少し力がこもり、彼を見あげた。
セイゲルさんが階段の踊り場で立ち止まる。 もう片方の腕を私の体に回した。

「なんの気無しに家を買ったが……どういうかな。 お前がいると空気の色や匂いがまるで違う。 番を持つのは一般的に、全ての獣人の夢だ。 でも俺はお前を見付けてもらってから、ボンヤリしてた夢がやっと明確な形になったんだ」

今までになく優しい瞳をこちらに向けて静かに話す、そんな彼から目が離れない。

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