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獣人さんが住む世界で大っきいカレに抱き潰されるお話

第7章 嫌いの影響




リビングは所狭しとばかりの獣人たちと、彼らの荷物であふれていた。
セイゲルさんの背後からそおっと顔を出した私に、スーツを身に着けた何人かの獣人が名刺を手にして好意的な様子で話しかけてくる。

「ハリス夫人、お初にお目にかかります。 わたくしはこういうもので…オーダーメイドに相応しい、ハイソサエティな服飾のご用命は是非わたくし共に」

「こちらも初めまして。 婦人衣料と雑貨を扱っております。 随分お若い方と聞いておりましたので、こちらではカジュアルなものを取り扱っています」

「わたくしスポーツを行う際の…こちらのご自宅にはプールはおありですか?」

「最新の靴やバッグなどは」

葉書サイズの名刺や新聞紙サイズのカタログは、あっという間に抱えきれないほどになってしまい、私は目を白黒させた。

「え、え。 セイゲルさん。 これ、あの?」

メロルくんがそれらを受け取ってくれ、シリカくんは来客用のお茶をテーブルに並べている。
セイゲルさんが別個に貰う名刺に目を通しながら私に話してくれる。

「ああ。 普通はな、獣人の妻は欲しい物があれば、店の者を家に呼んで買うんだ。 文具や日用品などはネットでももちろん構わないが、実物を見ないと分からないものもあるだろう。 そもそもなにせ、ここには女性の数が多くない。 だから一から作ってもらうパターンも多いんだ」

「へ……へえ、そうなんですか」

「今日は俺のことが嫌いなお前の顔見せや挨拶が主な目的かな。 もちろん彼らが持参したもので、何か気に入ったものがあれば貰うといい」

穏やかな表情で私に説明してくれる、その言葉の中に明らかに違和感のある言い回し。

「遠慮はするな。 嫌いな俺から贈られるものでよければ」

「……な…」

ね、根に持っている……!?
私がさっき咄嗟に口に出したから?

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