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獣人さんが住む世界で大っきいカレに抱き潰されるお話

第7章 嫌いの影響

足元にいたシンが「獣人は叱られたりけなされたりするとすぐ拗ねますからねえ」と小さく呟いた。
しかしながら、ここは他の獣人たちの前ではないのか。

「せ、セイゲルさん。 何、を子供じみた真似を」

「別に、俺はいつも通りだが?」

しらっと普段通りを決め込もうとする、厭味ったらしいセイゲルさんにむかっとした。
そんな私たちの不穏な空気を察したのか。 最初に挨拶をしてくれた獣人が、何やら上等そうな生地を手にして私の目の前にピラリと広げる。

「ま、まあ。 ハリス夫人、何ともお若くて美しい方ですね。 いかがです? 上質のシルクを使ったランジェリーなどは。 白磁のお肌にはさぞかし映えることでしょう」

これはキャミソールという代物だろうか。
上品な淡い紫色で、薄く透け感のあるレースをふんだんにあしらわれたそれを、とても綺麗だと思った。
こんな高そうなものは身に着けるどころか見たこともない。
目が吸いついてそろそろと手を伸ばそうとすると、獣人とセイゲルさんがにっこり笑ってくれた。

「そんなものを貰ってもハリス夫人は俺のことが嫌いだがな。 琴乃、欲しいか?」

が、セイゲルさんの声が品物に見惚れる気分を中断させる。
私は高速で伸ばしかけた手を引っ込めた。

「けっ、結構です! 私何も要りません!!」

「何だ急に? 我儘を言うんじゃない。 お客が困るだろう」

セイゲルさんこそ我儘で意地悪で子供みたい。
元はといえば、15分で済ますとかの発言が有り得ないのに。
午前中にシンから聞いた女性の話を思い出すと、余計にムカムカした。
まさかこんな服や下着や靴と引き換えに、私のことも買えるだなんて思ってるとか? 彼のデリカシーの無さにそんな考えさえ頭に横切る。

私が頭から湯気を出している間、獣人たちとセイゲルさんは何かを話し合っていた。

「ではハリス様。 我々は別室でお待ちします」

ぞろぞろ人が出て行き二人っきりになったリビング。

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