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獣人さんが住む世界で大っきいカレに抱き潰されるお話

第7章 嫌いの影響


「見て見ぬふりは知らないよりもタチが悪い。 どっかでさっき言ったみたいな、計算高い自分もいたのかもしれない。 そんな自分が時々嫌になる。 お前のことは分かってるつもりだ。 ……先ほどのことも含めて済まなかった」

言葉が出てこなくて首を横に振った。
それと同時に自分を恥じた。
あらためて、出会う前に私を想ってくれていた彼のことを想像する。

「過去の自分を俺は許さないが、その分もお前を大事にしたいって想いに偽りはねえ」

セイゲルさんは会いたいという気持ちの裏で、私の個人的なことを心配してくれていた。
ああ、知らないというのは本当に罪だ、と思う。
私が他人から蔑まれるたびに、この人は気に病んでいたのだろうか?

私はそんな彼を疑いかけた自分を恥じた。
こんなにも未熟で子供の自分を恥じた。
喉元から出た声が震える。

「セイゲルさん……私もごめんなさい。 私の知らないところで想っていてくれたばかりか、そんな悩みまで背負わせていたなんて」

「いや、いい。 スタートの位置が違う者に同じ場所を歩けと言う方が間違いだってのを……分かってんのに、俺は時々忘れる。 さっきも確かに焦ってたかもしれない。 お前にこれを試したくて」

そして彼が私の目の前に手の甲を差し出す。

「……手?」

私は条件反射的にお手を受けた。
手がなにか。
相変わらず手の甲はモッフリしていて可愛い。
反面、太く長い頑丈そうな関節を持つ指は猛々しい獣人を思わせる。
だがこれはいつもよりも猛獣具合が足りない、はて。

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