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獣人さんが住む世界で大っきいカレに抱き潰されるお話

第7章 嫌いの影響

考え込んだ私がその違和感に気付く。

「あれ、セイゲルさん、爪……が?」

なんと。
彼の立派な爪が切られている。
獣人の爪────それは牙と同じぐらいに、とても大切なものだとメロルくんたちから聞いている。
手入れは必ず毎朝自分たちで、ヤスリがけをするのだと。
元々は狼を彷彿とさせる獣人の強さを表すものだったが、今でもライオンのたてがみのような役割を持つという。
おそらくパンダ模様の黒いやつ的なものだとも私は解釈している。

「なっ……なん、で…折れたんですか!?」

慌てる私にセイゲルさんが顔を少し背け、ゆっくりと目を伏せる。
辛そうな表情だった。
だって。
たてがみのないライオンはメスライオンだし。
模様のないパンダはただのシロクマだ。

「全て失ったわけじゃねえ。 お前のためなら惜しくない」

「一体なにが起こったの?……わ、私のために…って?」

涙ぐみそうになりながら両手で彼の指を包む。

「舌もいいが、口が塞がると具合が訊けない。 これで存分にお前のまんこを触れるからな。 モノだと細かいとこまで分かんねえだろ? ふう……まあ、俺が選んだ道だ」

滲みかけてた涙がぴたっと止まる。
よくよく見ると、切られているのは人差し指と中指だけだった。
しかも深爪気味に。
それでも構わないんだ、とでも言いたげな彼の顔。
おそらくこの表情は私に褒めて欲しいんだろう。

「んんんんんん"ん"ん"ん"ん"」

「琴乃?」

多分私は思いっきり渋い顔をしてると思う。
セイゲルさんは確かに過去の私を憂い、爪を失うぐらい私を想ってくれてるのだと思う。
でも、でも。 何かが違う。
私は彼を褒めるために自分の心に嘘をついて良いものか?
セイゲルさんが焦れたように私の顔を覗き込んでくる。

「琴乃、感激のあまり泣くのを堪えてるのか? それは一体どういう心持ちなんだ?」

いっそこのまましばらく放っておいてくれないかな??

「っんんんんんん"ん"ん"…………」

眉間にしわを寄せてそんなことを悩みながら唸り続けた。

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