
──拝啓、支配様
第1章 1
朝、というのは忙しないもので、流れるように視界が切り替わっていく。
別に変わり映えしない僕の人生だが、今日この瞬間くらいは、変化を実感できるかもしれない。
普段行かない最寄り駅に行き、慣れない手つきで定期を買い、電車に乗る。
しかし、それで変化は尽きてしまう。
後は僕の人生同様、流れに身を任せた電車内で身体を窮屈にさせるだけだ。
右からも左からも人が押し寄せ、香水と汗の臭いが入り交じる中を数十分過ごし、ようやく目的の駅で降りる頃には、身体から汗が滝のように流れ落ちていた。
今日からこれを毎日……いや、週に5回経験するのか……。
考えただけで憂鬱な気分になった。
