ハズビンBL ルシアダ/アダアラ
第1章 ルシアダがチェスを興じて楽しく会話するだけ
「お前の心は痛まなかったのか、アダム」
その言葉にぴくりと眉を上げて、腕を組んだ。
「なにに?」
「粛清された地獄の住民の中にはお前の子孫が大勢いただろ」
「ハッハア。笑える。何百億の精子の結ばれた先なんていちいち考えるかよ。知ったことじゃないね」
クイーンに指をかけ、ルシファーはゆっくりと首を振った。
「そんなだから女たちはお前から離れていくんだ」
「なんだと」
「支配者面して無責任なんだよ、お前は。仲間の天使が何人死のうが責任も取りやしないだろ。好き勝手に暴れまわって。そういう悪いとこだけは何も変わっていない。愚かだ。なぜ人類の起源にこんな不完全な奴が生み出されたんだ」
「ファック。それこそ知るかよ。創造主様がこんなのがいいのぉって粘土でもこねたんだろ。ああら、大失敗って。気に食わねえな、はるか上から見下ろしてきた天使様の意見は」
ダンっと両手をテーブルについて立ち上がる。
ぶわりと風が吹いてルシファーの帽子を揺らした。
そんなこと、そんなこと自分が一番わかっている。
女一人満足に納得させられない無力さの根っこを、今更突いてくるなよ。
「じゃあ責任とれよ、王様? 人類最初の人間が堕天した。消滅もさせてもらえずに、散々殺してきた地獄の住民の仲間入りだ。オトモダチもいねえ、住民票一つ取り方もわからねえこの愚かな人間を、救ってくれんのかよ!」