ハズビンBL ルシアダ/アダアラ
第1章 ルシアダがチェスを興じて楽しく会話するだけ
瞬き一つしやしない。
急にへらへらしやがって。
「はは、すまない。お前が叫んでムキになると面白くてつい」
「なんっ」
カチン、と囮のビショップが倒される。
「はあ?」
「ほら、クイーンを取ってみろ」
わざとか。
そんな勝ち星いらねえよ。
腕を伸ばしてルークを滑らせる。クイーンにぶつけて盤外まで飛ばす。気づけば息が上がっていた。
ああ、腹が立つ。
「満足か」
「ああ、これで邪魔な砦が崩れた」
美しい所作で、ナイトがこちらのキングの手前に躍り出る。
「チェックだ」
そこは先ほどまでルークが死守していた線上。今は、誰も守れない。
しまった。見逃していた。
ポーンは届かず、兵力を後ろに下げても取られる駒が増えるだけだ。
「お前は不完全で愚かで失敗が多いガキだが」
「なんだと」
「私が夢見ていた、天真爛漫に人生を楽しむ理想の人間に近い」
次の一手を考えていた思考が止まる。
「だから可愛いんだ」
そうだ、こちらもナイトをぶつけに…。
「は?」
清々しいほどの笑顔が繰り返す。
「お前は可愛いよ、アダム」
ナイトは間に合わない。
なんつった。
キングを左に逃がせば、こちらのクイーンがとられてしまう。
こいつは今なんてほざいた。
被害を最小に抑えるには、クイーンがとられた後にナイトを排除する駒を準備する。時間稼ぎでしかない愚策だ。
「粛清が止まって、お前が天国でなく地獄にいる。無駄に地獄の魂が死なず、お前とこうして遊べる。長い長い絶望の中で、久しぶりに良いことが立て続けに起こっているよ」
言葉が喉から出てこない。
「光栄だろ?」
唇を舐めても言葉が出てこない。
なんてざまだ、アダム。
軽口が取り柄だろ。
真面目に受け取るな、こんな戯言。
「天国から迎えが来るか、お前が飽きて消えたくなるまでここにいろ」
急にへらへらしやがって。
「はは、すまない。お前が叫んでムキになると面白くてつい」
「なんっ」
カチン、と囮のビショップが倒される。
「はあ?」
「ほら、クイーンを取ってみろ」
わざとか。
そんな勝ち星いらねえよ。
腕を伸ばしてルークを滑らせる。クイーンにぶつけて盤外まで飛ばす。気づけば息が上がっていた。
ああ、腹が立つ。
「満足か」
「ああ、これで邪魔な砦が崩れた」
美しい所作で、ナイトがこちらのキングの手前に躍り出る。
「チェックだ」
そこは先ほどまでルークが死守していた線上。今は、誰も守れない。
しまった。見逃していた。
ポーンは届かず、兵力を後ろに下げても取られる駒が増えるだけだ。
「お前は不完全で愚かで失敗が多いガキだが」
「なんだと」
「私が夢見ていた、天真爛漫に人生を楽しむ理想の人間に近い」
次の一手を考えていた思考が止まる。
「だから可愛いんだ」
そうだ、こちらもナイトをぶつけに…。
「は?」
清々しいほどの笑顔が繰り返す。
「お前は可愛いよ、アダム」
ナイトは間に合わない。
なんつった。
キングを左に逃がせば、こちらのクイーンがとられてしまう。
こいつは今なんてほざいた。
被害を最小に抑えるには、クイーンがとられた後にナイトを排除する駒を準備する。時間稼ぎでしかない愚策だ。
「粛清が止まって、お前が天国でなく地獄にいる。無駄に地獄の魂が死なず、お前とこうして遊べる。長い長い絶望の中で、久しぶりに良いことが立て続けに起こっているよ」
言葉が喉から出てこない。
「光栄だろ?」
唇を舐めても言葉が出てこない。
なんてざまだ、アダム。
軽口が取り柄だろ。
真面目に受け取るな、こんな戯言。
「天国から迎えが来るか、お前が飽きて消えたくなるまでここにいろ」