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ハズビンBL ルシアダ/アダアラ

第1章 ルシアダがチェスを興じて楽しく会話するだけ


 もはや勝負はついていた。
 先を読み切っているであろう笑顔は、首を縦に振るのを待っている。
「こうして何の解決にもならない会話を相手しろ」
 ニコニコと。
 さっきまでの暗い目つきはどこに消えた。
「暇つぶしのために三人目の女にでもなれって?」
「ああ、名案だな」
「ジョークくらい判断しろよ……」
「なんだ、ジョークか。肩書は自由に決めろ。娘は忙しい。私は気まぐれにひきこもる。すれ違ってばかりだった。だから、独り言に答えてくれる相手にちょうどいい。それだけだ」
 ふざけんなってテーブルひっくり返してやろうか。
 どうせ眉一つ動かさないだろうが。
 はあっと息を吐く。
「いやだね」
「わかった」
 ぶわっと強風が襲ってきたかと両手で顔の前を塞ぐと、ぐぐっとお腹のあたりが押された。
 次に瞬きすると地獄の夜空に吹き飛ばされていた。
 豆粒のように小さくなった窓辺にルシファーが立っている。
 手を振るように赤い羽根を揺らして。
 あとから衝撃音が鼓膜をつんざいた。

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