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灰色ノ世界

第1章 灰色ノ世界

「……聞いてるよ。2組の山下竜だろ?」

「おお、そうだった! たつじゃなくて、りゅうだった!」

「……ったく、多々良は……」


 そこまで言いかけて、僕はハッとした。当たり前のように多々良の名前を口にして困惑する。
 でも多々良はニカッと笑って、


「なあ、尊(みこと)。来週の夏祭り、一緒に行こうぜ!」


 多々良は全く気にしていないようだった。しかも夏祭りに行くのを誘ってきた。


 視線を感じて、多々良の背後にいる女子たちと目が合う。なんとなく睨まれているような気がする。


「……女子と行けば?」

「俺は尊と花火を見たいの! その方が絶対、楽しいじゃん!」

「……っ……」



 

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