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Kalraの怪談

第28章 二十八夜目:見下ろし桜

☆☆☆
「あの日、俺は、Aに呼び出されたんだ。金をもってこいって。嫌だったさ。でも、それ以上にAが怖かったのもあって、結局呼び出しに応じたんだ。金を渡せば癖になる?わかっていたさ。でも、そのときはそうするよりほかなかったんだよ。」
「Aは学校近くのコンビニで待っていた。時間は9時を過ぎようとしていた。うちは門限が特になかったから、親には友達の家で勉強するから遅くなる、と嘘をついていたんだ。そうしたら、Aが、何を思ったか突然、
『見下ろし桜を見下ろしてみろよ』
って言い出したんだ。」
「その日の昼間、あいつは自分のダチに見下ろし桜なんかくだらねー、みたいな話をしたらしいんだ。それで、俺に見下ろさせて、実験しようと思ったらしい。死んでも俺ならいいやって」
「仕方がない。俺はAに促されるまま、一緒に学校の屋上に登ったよ。Aは何度か夜の学校に侵入したことがあるようで、昼の間に窓をひとつ開けておいたと言っていた。それで、俺達は屋上まで行ったんだ。」
「きっかり11時過ぎ、俺は言われるままに桜を見下ろしたよ。怖くなかったか?怖かったよ。もし噂が本当で、引き込まれたらって。うちの屋上知ってるか?生徒が上がる事を考えてないから、フェンスも何もないんだ。本当に引き込まれそうだった。俺は。足元のコンクリにしっかり両手をついて震えながら見下ろしたよ。」
「ちょうど桜は満開だった。見下ろした桜はきれいだった。きれいで、本当に惹かれそうだと思った。でも、それ以上は何も起こらなかった。」

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