
Kalraの怪談
第30章 三十夜目◯:猿の家
☆☆☆
そして、ある日、決定的なことが起きた。
夜、ふと目が覚めると体が固まったように動かない。顔が少し左側を向いていたので、辛うじて目を動かして、自分の左側を見ることはできた。ちなみに、私の寝ているベッドは左側は壁で、先ほど言ったように、その向こうはリビングになっている。そう、本来、私の見ている先には白い壁がなければいけない。
しかし、実際目に飛び込んできたのは、古い日本家屋の廊下だった。そう、あの夢で見ていた左手に折れるT字路がある廊下である。私は目を見開いていた。
金縛りにあっているので目を離すこともできない。目を閉じることもできない。ただ、自分の浅い呼吸音を聞きながらその光景を凝視することしかできないのである。
「これは夢だ」と言い聞かせて自分を落ち着かせようとする。
しかし、心臓は高鳴り、やはり、あの曲がり角が気になった。
そしてとうとう、私は夢とは決定的に違う光景を目にする。
その曲がり角、床に近いところに、
ペチャリ、
と白い手が這い出すのが見えたのだ。
その白い手は、ずりずりと廊下に這い出してくる。そして、また、
ペチャリ、
ともう一方の手が床につく。
『何かが這い出てこようとしている・・・』
私はこれ以上ないくらいに目を見開いていた。汗が額を伝うのが分かった。呼吸はさらに早くなり、舌が喉に張り付きそうなほど口の中はカラカラになっていた。
ゆっくりゆっくり、その『何か』は左に折れた廊下から這い出てくる。そして、とうとう、チリチリになった赤黒い頭髪が見えた。次第にそれは姿をあらわにし、とうとう、ぬっと顔を出してきた。
声が出たら、私はその時、悲鳴を上げていたと思う。その顔は焼け爛れたような色をしており、鼻や耳はぐずぐずでどこがどうだかわからないほどだった。辛うじて、目があるはずのあたりには、切れ目のようなものが見えるだけだった。
その顔を見て、幸い、私はすぐに卒倒したようだ。
気がついたら、朝になっていた。
そして、ある日、決定的なことが起きた。
夜、ふと目が覚めると体が固まったように動かない。顔が少し左側を向いていたので、辛うじて目を動かして、自分の左側を見ることはできた。ちなみに、私の寝ているベッドは左側は壁で、先ほど言ったように、その向こうはリビングになっている。そう、本来、私の見ている先には白い壁がなければいけない。
しかし、実際目に飛び込んできたのは、古い日本家屋の廊下だった。そう、あの夢で見ていた左手に折れるT字路がある廊下である。私は目を見開いていた。
金縛りにあっているので目を離すこともできない。目を閉じることもできない。ただ、自分の浅い呼吸音を聞きながらその光景を凝視することしかできないのである。
「これは夢だ」と言い聞かせて自分を落ち着かせようとする。
しかし、心臓は高鳴り、やはり、あの曲がり角が気になった。
そしてとうとう、私は夢とは決定的に違う光景を目にする。
その曲がり角、床に近いところに、
ペチャリ、
と白い手が這い出すのが見えたのだ。
その白い手は、ずりずりと廊下に這い出してくる。そして、また、
ペチャリ、
ともう一方の手が床につく。
『何かが這い出てこようとしている・・・』
私はこれ以上ないくらいに目を見開いていた。汗が額を伝うのが分かった。呼吸はさらに早くなり、舌が喉に張り付きそうなほど口の中はカラカラになっていた。
ゆっくりゆっくり、その『何か』は左に折れた廊下から這い出てくる。そして、とうとう、チリチリになった赤黒い頭髪が見えた。次第にそれは姿をあらわにし、とうとう、ぬっと顔を出してきた。
声が出たら、私はその時、悲鳴を上げていたと思う。その顔は焼け爛れたような色をしており、鼻や耳はぐずぐずでどこがどうだかわからないほどだった。辛うじて、目があるはずのあたりには、切れ目のようなものが見えるだけだった。
その顔を見て、幸い、私はすぐに卒倒したようだ。
気がついたら、朝になっていた。
