テキストサイズ

Kalraの怪談

第33章 三十三夜目:首切り服

☆☆☆
伯母が首を吊って死んでしまったのです。その日も、いつもと同じように母に着物を着付けてもらった伯母は、その足で近くの公園に向かい、そこで自殺を図ったのです。遺書はありませんでしたが、警察は借金苦と判断しました。

そう、伯母はたったの数ヶ月で数百万の借金を作っていたのです。カードローンやサラ金、ついには、闇金にまで手を出していたとのことです。携帯電話には何件もの取り立ての電話やメールの履歴が残されていたことから、警察がそう判断するのも致し方なかったと思います。
しかし、私はあの着物のせいだと思えてなりませんでした。伯母の死後、その着物はシミひとつつかない状態で私の家に帰ってきました。桐の箱に収められた着物を見て、私はとても気味が悪くなりました。

曾曾祖母、曾祖母、伯母と3代に渡って少なくとも3人の女性が亡くなったときに着ていた着物です。いくら形見の品とはいえ、母も着る気にはならなかったのでしょう。桐の箱は、元あった祖母の押し入れにしまわれました。

これで一安心と思っていたところ、数日後、その箱が居間に置かれているのをみて、私はびっくりしました。母がなぜわざわざ出してきたのか?まさか着るつもりじゃ・・・。私は不安になりました。

しかし、その箱を見たとき、母が表情を凍らせたのをみて、私はなおさら驚いたのです。箱を出したのは母じゃなかったのです。母は私に箱を出したのかと問いましたが、私も当然知りません。母は箱を元の場所に戻すと、私に絶対に触れないようにと釘を差しました。

果たして、数日後、また、居間に例の桐箱が置かれているのをみて、私達は目を見開くことになるのです。母も私も心当たりがありません。あと、家にいるのは父ですが、父も知らないといいます。それどころか、父は、箱がどこにしまわれているかすら知らないのです。

実は、このしまっては居間に現れ、ということがこの後、2回、起こったのです。最後に居間に箱があるのを見て、母は叫び声を上げました。そして、今度はその箱を普段は家族は誰も使わない庭先の物置の奥にしまいこんだのでした。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ