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Kalraの怪談

第34章 三十四夜目:現代風の呪い

鍵はYが残した日記だった。Yは律儀な性格で、ずっと日記をつけていた。それは息子のMが死んだ後も同じであった。そこに、R、G、Fの死についての意外な真相が書かれていた。

「Yは、Mの死について、公的に3人を裁くことができないと悟ったんだ。それで、自分で鉄槌を下すことにしたんだな。離婚もその準備だったようだ。」

Yは伝をつたってRやGの引越し先を調べると、すぐにその地域の様々なIT掲示板にMが流したツイートのURLを貼り付けていった。実は、何度か当該ツイートは削除されたのだが、Y自身が魚拓をとっており、いろんなアカウントを使って再投稿を繰り返していたのだった。
Yはそうやって彼らが引っ越す先々で噂を流していった。その間も、RやGの様子を観察し、死を確認するまで付け回していたようだった。
その様子は日記に克明に記載されていた。

Fについては、Yも苦労したようだった。父親の機転により、足取りが容易に追えなかったからだ。そこで、Gの死亡を確認した後、なけなしの金で私立探偵に依頼したようだった。結局、例のネットニュースはその私立探偵のアイデアだったのだ。殆どの人がMに同情的なコメントをする中、Mに批判的なコメントをしたFの投稿は目立ったのだ。そこから、居場所を特定するまでにはさほど時間がかからなかった。

「Fを刺殺したことも日記に書かれていたよ。ついでに凶器のナイフも部屋から出てきたから、F殺害犯はYで決まりだった。」

Aさんは、ここまで話すと、一息ついた。

「さっき、Yは公的に3人を裁くことができないと悟り、それで自分で鉄槌を下すことにしたーと言っただろう。俺も当時、そう報告書に記載した。でも、本当は、そこに書かなかったことがあるんだよ・・・」

Aさんは証拠品の日記をめくる。Mの死から、学校の説明、教育委員会の調査の履歴、自分で聞き取った内容、教育委員会の調査結果に対する憤り、失意と絶望。

「日記をめくって、Mの死から3ヶ月後。そのページには、中央にこう書かれていた。
 『お父さん、あいつらを殺して』
 その筆跡は、どうみてもYさんのものじゃなかったんだ。」

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