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Kalraの怪談

第35章 三十五話🌕️:部屋の中の溺死体

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「結局、原因は寄生虫だったんだ」
死因が特定されるまで、それから数週間かかったそうだ。日本住血吸虫という寄生虫の亜種で、これまで発見されていなかったものらしい。この寄生虫がいる水域で水に浸かると、皮膚から原虫が侵入し、数ヶ月かけて体内で増殖、悪寒や下痢などの症状の他に、腎機能や肝臓機能を冒し、体中がむくむそうだ。
そして、最後には意識障害をおこし、助けも呼べないままブヨブヨの体で死を迎える・・・。

「ひとまず、これで、事件自体は解決した。4人は、揃って心霊スポットである神社にでかけ、そこで、何らかの理由で住血吸虫に感染した。ほぼ同じ体型、同じ年齢であったことから、ほぼ同じタイミングで死亡したーというわけだ。一応、そう報告書には書いたよ・・・」

でもさ、とAさんは続けた。

「おかしくないか?2月だぞ?そんなときに、なんで4人揃って、水の中に入ったんだ?」
☆☆☆
<第三の証拠:ビデオテープ>
「実は、報告書を書き上げる前に、部下の一人がおもしれーことを言ったんだ。
 『Aさん、こういうツアー企画するようなやつは、ビデオとか撮ってないですかね』って」

どうして水に入ったのかが気になったAさんは、T.Tの部屋をもう一度捜査してみた。すると、HDビデオカメラがあったのに気づいた。最初に捜査したときには特に関係がないと思われ、見向きもされなかったものだった。
早速Aさんたちは、鑑識の協力の下、ビデオカメラの中の映像を調べてみた。

『あ、ありましたよAさん。2月10日から11日にかけての映像です。』

『第一の場面』
明るいバンガローの中。生前のS.I、T.Y、R.Sらが写っている。どうやら写しているのはT.Tのようだ。
S.I「これから、N神社を訪ねに行きます」
T.Yが横から顔を出し、ピースサインをする。メガネをかけたR.Sはそんな二人を見て、にこやかに笑っている。

『第二の場面』
車に乗っているよう。運転しているT.Tが助手席から映されている。背後から男二人がまだつかねーのか?などと声をかけてくるのが聞こえるので、撮影者はR.Sの様子。
外は真っ暗で何も見えない。ヘッドライトが闇を丸く切り取り、舗装の良くない村道を照らしている。

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