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Kalraの怪談

第44章 四十四夜目:死縄(しじょう)

その声を聞きつけたのか、祖父が仏間に飛んできました。
「どうした!」
「ああ、あ、おじちゃんが・・・」
私は震える指で、伯父の遺体を指し示すことしかできませんでした。
祖父は伯父の遺体を一瞥するや否や、
「おのれ!死なねえか!」
と飛びかかりました。
祖父の体の下で伯父の体はビクンビクンと大きく跳ね上がるように動き回ります。それを祖父が馬乗りになって押さえつけ、首を絞め始めたのです。
5分くらいそうしていたでしょうか。伯父の動きは徐々に小さくなり、やがて大人しくなりました。
「迷って出るんやない。この穀潰しが!」
額に浮かぶ汗を拭うと、息を切らして祖父は私に向き直りました。
「ええか、死人返りは縁起が悪いこっちゃ。このことは村の他のもんにはくれぐれも言うんじゃないぞ。」
それで、もう部屋に戻ってええ、というので、私は自分の部屋に飛んで帰り、先程の光景を思い出して布団の中で怖くて震えていました。

その後、伯父の葬儀は普通に行われました。
私の知る限り、あの出来事の他に変わったことはありませんでした。

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