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Kalraの怪談

第46章 四十六夜目:呼ぶ子

【呼ぶ子】

何年か前に、東北地方のA県を訪ねることがあった。用向きがあっての一人旅だったが、用件そのものは2日ほどで終わった。
安い民宿に宿泊したのであるが、その宿の主人と食事の際に話をするようになり、だいぶ親しくなった。
私は積極的に話したわけではないのだが、話の端々で怪異譚や民俗学に興味があるということが伝わったようで、
「それなら、T先生に会うのがいいべ」
と言われた。T先生は祖父の代から地元の郷土史を研究しているアマチュア民俗学者だということだった。もともとは小学校の先生をしており、退職後は私塾を開いていたという。今ではそれもリタイアし、研究に打ち込んでいるのだそうだ。
旅行日程はまだ2日ほど残っていたので、私はこの紹介されたT先生に会いに行くことにした。

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