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Kalraの怪談

第46章 四十六夜目:呼ぶ子

ここまで読んだところで、T先生がお茶を持って戻ってきた。
私が戻した本を見て、破顔した。
「おう、その本に興味がおありか。なるほど、なるほど」
そいつは、私の祖父の代からの研究でな、と語り始める。

☆☆☆
その本にあるとおり、『呼ぶ子』伝承は、この周辺でもS村にだけ伝わる話でな、通常、こういった民話のたぐいは周辺の村にも同様の話が伝わるのが普通だから、これは民俗学的には極めて珍しいものなんだ。
どこまで読みなさった?ああ、そうか、最初のところだけか。そうそう、子どもが『呼ぶ子』になるとどうなるのか?ということだろう。
そう、『呼ぶ子』は『呼ぶ』子、つまり、呼ぶ子沢で死んだ子は、他の村人を『呼ぶ』ようになるんだ。
呼ぶ子が出ると、村人が何人も行方不明になる。村人総出で探すと、呼ぶ子沢にぷかりぷかりといなくなった村人が死んで浮いているーという。
だから、村人は決して呼ぶ子沢に近づこうとしないし、特に子どもを近づけることはしなかったという。

実際に、呼ぶ子が村人を呼んだという話は多くあるんですか?と、私が問うと、

「実は、私の祖父が小さい頃に一度、私が若い頃に一度、本当に呼ぶ子が出たことがあるんだ。」

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