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Kalraの怪談

第5章 五夜目:イヌカガミ

☆☆☆
「・・・と、いうわけで、この古い鏡がうちに伝わっているわけ」
AはB子やC子に古い鼈甲のようなものでできた鏡を見せた。

夏のある日、Aが肝試しドライブにB子、C子、それからB子の彼氏のDを誘った帰りでした。腹ごしらえに立ち寄ったファミレスで、Aがおもむろに語りだした話がこの話だった。

近所の心霊スポットを回りながらAが怖い話をする、という肝試しドライブ自体は特に何もなかった。元来怖がりのC子も特に怖がることもないくらいだった。
もともと、C子以外は怖い話などが好きで、何かと気が合う友達同士、よく怪談話などで盛り上がっていた。Aは怪談を語るのが好きだった。

「それ、持ち出して大丈夫なの?」B子が言う。
「大丈夫、大丈夫。イヌカガミなんて迷信だろ。現に今まで、うちでも押し入れの奥に入っていただけで、別に祀ってなんかいなかったし。」
「え?そうなの?」とC子。
「そうそう、実は、代々、この話とともに鏡が受け継がれていてさ、兄弟が多いときは押し付け合いも起こったんだって。昔の人って本当に迷信深いよな」
「でも、そんなことがあっても捨てなかったのなら、やっぱりそれって、呪われてるんじゃない?」
オカルト好きなB子は、そんなことを言いながら話を盛り上げようとする。
「ちょっと、気持ち悪い、やめてよ」
C子は本気で怖がっていた。Aは笑って、
「呪いは迷信だって。まあ、そういういわくつきの鏡ってことで、ほしければあげようかと思って持ってきたんだ。
 俺、夏休み明けには引っ越しするからさ。」
C子は思いっきり引いていた。
でも、B子は違った。興味津々という顔をして鏡を見ている。

「私いらない」
C子は言った。
「B子は?おっかない話好きだろ?」
しばらく考えてB子は「いい」と言った。
「何だ、せっかく話ししたのによ」
Aは鏡をしまい、若干機嫌悪そうにした。

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