テキストサイズ

Kalraの怪談

第46章 四十六夜目:呼ぶ子

しばらく3人でいろんな泳ぎ方を楽しんだり、潜って淵に泳ぐ魚を見たりして遊んでいた。K子は背泳ぎのようにして、ぷかりと浮かぶ。
淵には岸から木々の枝がかかり、その向こうから陽光が差していた。重なり合う葉の隙間からキラキラと光る陽の光はとても美しかった。
うっとりとその様子に見とれていると、突然、バシャっと大きな水音があった。K子が振り返ると、音のする方を同じように見ているR子が目に止まった。
水が波立っている中心にはなにもない。見回すと、一緒に泳いでいたはずのS子がいない。
K子は周囲を見回した。岸にもS子はいない。
ゾッと背筋に冷たいものが這い上がる。
大きな水音、いなくなったS子。
K子とR子は慌てて水の中に潜ったりしてS子を探した。
10分ほど探したが、S子の姿を見つけることはできなかった。
二人は大急ぎで村に取って返し、親に事情を説明した。村では警察や消防団も含めた捜索隊が組織され、呼ぶ子沢で大規模な捜索が行われた、が、ついに、S子は発見されなかった。

「当時、S子の母親は随分K子の親を責めとった。無理もないことだ」
T先生は言う。K子自身には表立って非難の言を向けなかったが、親にはかなりきつくあたっていたようだった。捜索は続いたが、1ヶ月しても遺体を発見することができなかった。

「本当に恐ろしいのは、この後だ」
T先生は茶をすすりながら続けた。
事件から2ヶ月ほどしたころだったか、K子が一人で家にいると、家の中でペチャペチャとなにか濡れたような音がする。正確に言うと、濡れた足で廊下を歩くような音だった。
不審に思って廊下を見回しても誰もいない。ただ、床に大きな水たまりができていた。
また、別の日。K子がコップで水を飲もうとすると、コップの水に影が映る。よくよく見ると、いなくなったS子の顔に見える。驚いてもう一度よく見ると、消えている。
さらに、K子が風呂に入っていると、湯船の水面にどういうわけか、自分とは違う顔が映っているように見えてならない。じっと見ていると、見る間にその影が濃くなり、水面が盛り上がってくる。見る間に黒髪の女の子が風呂の中から顔を覗かせる。
ぎゃあ!と叫んで、とっさに手を前に突き出した。その手が風呂の縁においてあった入浴剤の缶を倒してしまい、入浴剤がお湯に溶ける。
それにつれて、その頭自体もスーッと溶けて消えた。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ