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Kalraの怪談

第46章 四十六夜目:呼ぶ子

☆☆☆
次の日、私は気になることがあり、地元の郷土資料館に足を運んだ。書籍コーナーには、案の定、T先生の『【呼ぶ子】伝承考察』が置いていあった。目次を見る。

まえがき
呼ぶ子伝承の分布について
呼ぶ子伝承と類似の伝承と呼ぶ子伝承の特異性
呼ぶ子とはなにか
呼ぶ子の誕生
呼ぶ子考察
終わりに

私は「呼ぶ子の誕生」の章を見た。

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これまで述べたように、呼ぶ子は「呼ぶ」子、すなわち、呼ぶ子自身が他者を「呼ぶ」という意味でもあるが、呼ぶ子自身が「呼ばれた」子であることも含意している。
呼ぶ子沢には魂が溜まる。川で亡くなった子の魂は幽世(かくりよ)には行かず、淵に溜まると信じられていた。そこで、母親たちは、呼ぶ子沢で我が子を呼び戻そうとするのである。
ここに、特殊な方法を用いて、その魂を呼び戻すのである。
(中略)
このように外法に呼び戻された魂は、それ自身の意志もなく無差別に村人を呼ぶようになるか、生前の意思に従い、何人かの者を引き込みに来るかになる。その違いはなぜ起こるのかはわからない。なにか、恨みのようなものが関わっているのだろうか。
(後略)
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「呼ぶ子考察」の章にはこうあった。
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「呼ぶ子」伝承がこの地にのみ伝わるのは、取りも直さず、呼ぶ子がこの地から外に出ることができないことを意味しているのではないか。これは座敷わらしの伝承が、座敷ボッコ、ザンギリワラシなどと名を変えても類似の伝承が奥州全体に広がっているのとは対象的である。
また、呼ぶ子が渡るためには、水が必要であることも特異である。呼ぶ子の怪異には必ず水が関係している。これも、座敷わらしが家を必ず媒介することと比較することができる。水が及ぶ範囲はおそらくS川の流域であり、この範囲に結界にも似たような働きがあり、昔からS村が呼ぶ子の脅威にさらされていたのではないかと思われる。
(中略)
そして、呼ぶ子と共存するために、禁足地を設けることは、森と川と共存するための古代の知恵でもあり、呼ぶ子は人と自然を結びつけるために必要とされる定期的な生贄や人柱のような存在であるとも考えうるのである。
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話はこれで終わりです。
もし、S子さんの母親が生きていれば、もっと違う話が聞けたかもしれません。
残念ながら、昨年、亡くなられたようです。

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