
Kalraの怪談
第54章 五十四夜目:鉄箸の呪い
☆☆☆
「あれは、俺が初めて捜査一課に配属されたときだった。巡査部長だったな。まあ、刑事としては早くもなく、遅くもなく、といった感じだ。」
当時、捜査一課に入るのは結構大変で、所轄で刑事経験があり、かつ、捜査一課に勤務した事がある先輩や上司の「引き」がないとなかなか配属されなかったそうだ。Aさんを「引いた」のは当時捜査一課で主任(警部補)をしていたHさんという50代の刑事だったという。
「Hさんは本当にいい人でな。被害者はもちろん、被疑者にも情が厚い人だった。特にオトシが上手だった。」
まだまだ新米のAさんは、このHさんと組んで捜査にあたることが多かったという。そんなある日、S警察署の管内で奇妙な変死体が発見された。
普通は、一件くらいの変死では捜査第一課の刑事が出張ることはないということだが、調べが進むうちに、その変死の異常さが目立って来たことから、Aさん達も事件に絡むことになったのだという。
「その変死にはまず外傷がねえ。にも関わらず、心臓に穴があいて体内に多量に失血して死んでいたんだ。で、調べてみると、この3年間で同じ様な死に方をしているやつがS署管内だけで3件、警視庁全域で見ると5件も発生していた。どう考えてもおかしいだろう?」
この事件のおかしさにはじめに気付いたのは、S署のベテラン刑事だった。その刑事がHさんの知り合いでもあり、彼に相談したことで事件の異常さがはっきりした、というわけだ。
「俺達は過去の変死も含めて、もう一回洗い直したんだ。そうしたら、それらの人間に共通の知り合いがいることが浮かんできた。」
その男をここではTとしておこう。Tは、5件の事件被害者全員と仕事上などで面識があり、かつ、被害者の死によって金銭的なトラブルを免れたりなど、何らかの意味で利益を得ていた事がわかった。
「Hさんと俺はさっそく、Tを引っ張った(任意同行の意味)」
Hさんの取り調べの中でTはあっさりと被害者との関係を認めた。ただ、今回の件は当然として、過去のどの変死に関してもほぼ完璧なアリバイがあった。
そして、なにより、もし他殺だとしても殺害方法が皆目見当がつかなかった。
「あれは、俺が初めて捜査一課に配属されたときだった。巡査部長だったな。まあ、刑事としては早くもなく、遅くもなく、といった感じだ。」
当時、捜査一課に入るのは結構大変で、所轄で刑事経験があり、かつ、捜査一課に勤務した事がある先輩や上司の「引き」がないとなかなか配属されなかったそうだ。Aさんを「引いた」のは当時捜査一課で主任(警部補)をしていたHさんという50代の刑事だったという。
「Hさんは本当にいい人でな。被害者はもちろん、被疑者にも情が厚い人だった。特にオトシが上手だった。」
まだまだ新米のAさんは、このHさんと組んで捜査にあたることが多かったという。そんなある日、S警察署の管内で奇妙な変死体が発見された。
普通は、一件くらいの変死では捜査第一課の刑事が出張ることはないということだが、調べが進むうちに、その変死の異常さが目立って来たことから、Aさん達も事件に絡むことになったのだという。
「その変死にはまず外傷がねえ。にも関わらず、心臓に穴があいて体内に多量に失血して死んでいたんだ。で、調べてみると、この3年間で同じ様な死に方をしているやつがS署管内だけで3件、警視庁全域で見ると5件も発生していた。どう考えてもおかしいだろう?」
この事件のおかしさにはじめに気付いたのは、S署のベテラン刑事だった。その刑事がHさんの知り合いでもあり、彼に相談したことで事件の異常さがはっきりした、というわけだ。
「俺達は過去の変死も含めて、もう一回洗い直したんだ。そうしたら、それらの人間に共通の知り合いがいることが浮かんできた。」
その男をここではTとしておこう。Tは、5件の事件被害者全員と仕事上などで面識があり、かつ、被害者の死によって金銭的なトラブルを免れたりなど、何らかの意味で利益を得ていた事がわかった。
「Hさんと俺はさっそく、Tを引っ張った(任意同行の意味)」
Hさんの取り調べの中でTはあっさりと被害者との関係を認めた。ただ、今回の件は当然として、過去のどの変死に関してもほぼ完璧なアリバイがあった。
そして、なにより、もし他殺だとしても殺害方法が皆目見当がつかなかった。
