テキストサイズ

Kalraの怪談

第56章 五十六夜目:曲がり屋敷

広い、そして、やたらに入り組んでいるのだ。何度曲がったかわからないほどの廊下を曲がり、やっと私達は居間と思しきところに到達した。
「ね?すごいでしょう?」T子が笑う。
「ひゃー!すごいね。私、もう玄関がどっちか全然わかんないよ」
「うちの両親に挨拶が終わったら、もう少し家の中見て回ってもいいよ。もちろん、迷わないように私もついていくからさ」
T子によると、この家は、江戸時代から家が栄えると共に増築を繰り返し、その結果、こんな迷路みたいな家になっているのだという。

T子の両親に挨拶をすると、夕飯を食べていけと誘われた。夕飯の準備が整うまでの時間、私とT子は家の中を見て回ることにした。

迷路みたいーとT子は言ったが、想像以上だった。ここは廊下か?と思って歩いていると行き止まりになり、部屋かと思って襖を開けると、そこに更に廊下が続いている。階段があるが、途中で途切れている。部屋に一旦入り、そこを抜けないとトイレにも行けないようになっている。廊下が途中で意味もなく九十九折れになっていて、その奥に脈絡なく床の間がある、など。およそ機能的ではない。

「昔は、よく親戚の子とかくれんぼをして遊んだんだけど、なかなか見つからないのよね」
T子がそういうのももっともだと思った。
私なんか、見つけるどころか、自分が迷子になってしまいそうだ。
「すごいでしょう?近所では、この家、『曲がり屋敷』なんて言われているのよ」

ストーリーメニュー

TOPTOPへ