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Kalraの怪談

第56章 五十六夜目:曲がり屋敷

☆☆☆
すっかりT子の家に感心し、あちこち見ている間にあっという間に夕飯の時間になった。夕暮れになると、T子の家は雨戸を全部閉めるらしい。最初に通された居間でT子の父母、それから祖父、祖母、T子、T子の弟、そして私の7人で食卓を囲むことになった。出てきた料理はK子さんが作ったものだという。お客さんだということで、わざわざこのあたりの郷土料理を振る舞ってくれたらしい。

祖父・祖母はあまり喋らないが、T子の顔をニコニコしながら見ており、T子は孫としてとても愛されているのだろうと感じた。T子の父や母は非常に気さくで、初対面の私に気を使い、色々とこのあたりの昔の話を聞かせてくれたりした。
「あ、時間!」
私は慌てて言う。これ以上いると、バスの最終時間に間に合わなくなってしまう。T子の家には泊まれないのだから、私は一番最後のバスで帰らなければならない。バス停で帰りのバスの時間を確認してきた。その時間まであと20分ほどに迫っていた。
「バスで帰るなら早よせねばな」
T子の祖父が言う。
「ありがとうございました」
私は礼を言い、T子にも別れを告げる。今日はT子は実家に泊まり、明日、合流して一緒に隣県に足を伸ばす算段だった。
「あれ?でも、今日って土曜日じゃない?」T子の母が言った。
「そうすると、もう終バスは行っちまってるな・・・」父が続けた。
そういえば、私は平日のダイヤを見ていた気がする。そうか、土日はもっと便数が少ないのか・・・。

私が困った顔をしていると、T子が助け舟を出してくれた。
「じっちゃ、ばっちゃ。泊めてやるわけにはいかねえか?」
あまり聞かないT子の方言。祖父と祖母は困ったように顔を見合わせている。
「あ、でも、大丈夫です。タクシーとか呼べたりしませんか?私も着替えとか持っていないし・・・」
困らせては何なので、と、遠慮がちに言う。
「だめよ、この辺、タクシー会社ないし、ものすごいお金かかっちゃうよ?」
「ねえ、ばっちゃ。お願い」
T子は祖父と祖母を拝むように言う。
はあ、とため息をつき、祖母が口を開いた。
「わかった。ええ。ただし、T子や、お前の友達にも、禁忌を守ってもらうぞ」

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