
Kalraの怪談
第56章 五十六夜目:曲がり屋敷
背後を振り返るまでもなく、『ナニか』が追いかけてくるのがわかった。這いずっていた先程までとは打って変わり、機敏な動きで追ってくるのが気配でわかった。
「いやー!」
私は転がるように駆け出していた。無我夢中で廊下を進み、襖を開け、とにかく逃げた。後ろからくる『ナニか』に追いつかれないようにするのが精一杯だった。
どこをどう逃げたかわからないまま、幾つ目かの部屋の戸をばっと開けると、頬を清涼な夜気が撫でた。
薄ぼんやりとした月明かりが中庭の池にたゆたっている。
そう、そこは中庭だった。
私が次の部屋への襖だと思って開け放ったのは、襖ではなく、雨戸だったのだ。
一瞬、青い月影に照らされる中庭を呆然と見つめる私の横を、さーっと風が吹き抜けた。
内から外に。
淀んだ曲がり屋敷の中から、
清浄な外界に向けて。
わーはははははっ!!!わーっっははっはっは!!
途端、耳をつんざくような哄笑が響き渡った。いや、そんな気がしたのだ。
実際に声が聞こえたというより、頭の中で響いたようだった。
そして、私の意識はそこで途絶えた。
「いやー!」
私は転がるように駆け出していた。無我夢中で廊下を進み、襖を開け、とにかく逃げた。後ろからくる『ナニか』に追いつかれないようにするのが精一杯だった。
どこをどう逃げたかわからないまま、幾つ目かの部屋の戸をばっと開けると、頬を清涼な夜気が撫でた。
薄ぼんやりとした月明かりが中庭の池にたゆたっている。
そう、そこは中庭だった。
私が次の部屋への襖だと思って開け放ったのは、襖ではなく、雨戸だったのだ。
一瞬、青い月影に照らされる中庭を呆然と見つめる私の横を、さーっと風が吹き抜けた。
内から外に。
淀んだ曲がり屋敷の中から、
清浄な外界に向けて。
わーはははははっ!!!わーっっははっはっは!!
途端、耳をつんざくような哄笑が響き渡った。いや、そんな気がしたのだ。
実際に声が聞こえたというより、頭の中で響いたようだった。
そして、私の意識はそこで途絶えた。
