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Kalraの怪談

第57章 五十七夜目:取りかえっ子

☆☆☆
Kさんたちは私の家から本の数十メートルのところに住んでいました。幼稚園に行くときや、友達と連れ立って公園に行くときなど、どうしてもの時以外、私はKさんの家の前を通らないようにしていました。
ある時、そう、あれは私が小学校2年生だったと思います。習い事でピアノをやっていたのですが、その帰り道でした。ちょうど習い事のお教室から普通に帰ろうとするとKさんの家の前を通ることになるのです。いつもは、一緒に帰る母になんやかんやと理由を言ってはそこを通らないようにしていたのですが、その日は母が急いでいたようで、一番近い道であるKさんの家の前を通ることになってしまいました。
仕方なく、私はできるだけ顔を伏せてKさんの家が目に入らないようにしていたのですが、なにかの拍子にふと顔を上げてしまったのです。

二階の窓だったと思います。そこに人影が見えました。
そして、よせばいいのに、つい気になって私は目を凝らしてしまったのです。
そこにいたのはあの子でした。

いいえ、正確にはきっとあの子なのだろうという何者かでした。
それは顔をベッタリと窓にはりつけ、こちらをギョロギョロとした目で見ていたのです。
「ひっ!」
私は母の手をぎゅっと掴んで、つい声を上げてしまいました。
母親は私を見て、私の視線を追いました。私は一瞬そんな母の顔を見て、また、視線を窓に戻したのですが、そこには、すでに何もいませんでした。
「どうしたの?変な声を出して」
母が怪訝な声で尋ねてきましたが、私は何も言うことが出来ませんでした。
恐ろしくて、今すぐにでもここを離れたい、そう思ったのです。

これで終わっていれば、あれはもしかしたら、本当にKさんの家の子で、ただ単に気味の悪いイタズラだった、で済んだのかもしれません。
しかし、そうはなりませんでした。

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