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Kalraの怪談

第8章 八夜目:山の怪談

声についていかなければいいのだろうか?
それにしても、近づいてきたらどうしたら良い?

私はとっさに木の陰に身を隠した。
祖父が言ったことを思い出す。

「物の怪は、人の息を嗅ぐ。息を止めておれ」

私は息を止めた。タオルで口を覆う。

「おおい、おーーい」

声はますます近づいてきた。複数の人の気配がする。
草ずれの音、石を踏む音・・・

私は更に縮こまるように身を低くした。
しかし、怖いもの見たさもあり、こっそりと木の陰から覗いてみたのだ。



なんてことはない、警察官だった。
複数いるのは、地元の村の人だろうか、
皆同じハッピを着ている。
ロープを手にしてはぐれないように歩いていた。

「何を探しているんですか?」

私は声をかけた。
さっきまで物の怪だと思っていたのがバカらしい。

「おーーい、いたぞー」

警察官が声を上げると、10人近い村人が集まってきた。

口々によかった、よかったと言い合う。
私が事情を聞くと警察官は言った。

「今朝、店で、独り言をいいなら食事をして
 そのまま自殺の名所の山に一人で登っていったと
 そう言う話を聞いて、村の人と探しに来た」

え?

私が登った山は決して自殺の名所ではない。
調べてきたのだ
しかし、警察官が言った山の名は私が目指していたのとは違っていた。

『そこ、右だ、』

そう言った、あの老人
老人と話をしていたはずなのに、喫茶店の店主は『ひとりごと』と
「おーい」と呼ぶ方と逆に行っていたら、私はどうなっていたのだろう

あの老人こそがこの世のものではなかったのだ。

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