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Kalraの怪談

第13章 十三夜目:図書館の本

Aはその時4年2組だった。隣のクラスにずっと学校に来ていない子がいるのは知っていた
それがT中くんだった。

校長先生の話は家庭の事情で学校に来られないまま、家で亡くなった、という程度のものだったが、その後、親同士の噂話で、どうやらT中くんは虐待死したらしいことがわかった。

6年生の兄は優秀だったが、Y生はテストの点も良くなかったようで。エリートだった父親はそれが許せなかったらしい。

その年の春頃からY生を部屋に閉じ込めてかなり強い折檻をしながら勉強をさせていたようだった。嘘か本当か、発見されたときY生の顔はアザだらけで、まるで別人だったということだった。
死因は結局、父親に頭を殴られたことが原因の脳挫傷だったようだ。

Aはその話を聞き、もしやと思った。
ー殺される
ー閉じ込められている
ー早く時間がない

ーもうダメだ

Aは図書館に行き、例のミステリの四巻を開いた。
それにも線が引かれており、それには

ーた・す・け・て

とあった。

Aは、本の裏表紙についている貸出の日付を見た。
Aが借りる前の日付は
一巻は「X年6月23日」
二巻は「X年7月4日」
だった。三巻は借りていないので、最後の日付を見る。
三巻は「X年9月10日」
だった。

Aは二学期になってからこの本を読み始めていた。
三巻はAが借りようとした直前に返されていた。
四巻の最後の貸出日は「X年9月28日」だった。

Y生が亡くなったのは10月3日だった・・・。
ここまで見て、このメッセージは間違いなくYのものだとAは思っていた。

このときに気がついて何らかの手を打っていれば、もしかしたらY生は死ななかったかもしれない・・・。
そう思って、胸が苦しくなった。

しかし、Aが最も恐怖を感じたのは、念のためと思って借り出してみた五巻に、その文字を発見したときだった。
直前の貸出は「10月5日」
途中折れているところがあり、
見ると

『よ・んだ・・・のに』

ー読んだのに・・・
それとも
ー呼んだのに・・・

Aは叫び出しそうになるのを必死に堪えた。そして、その本を閉じると、以降、図書館に行くのをやめてしまった。

今まで、誰にもこの話をしなかったという。

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