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Kalraの怪談

第14章 十四夜目:葬儀屋の話

この時初めて私は「山田一郎」に興味を持ちました。

ある時、ふと、思えばやめておけばよかったのでしょうが、私はご記帳を見返してみようと思ったのです。

私が過去のご記帳を見返してみますと、幾つか、山田一郎の名を見つけることができました
一番古いものは、2年前の10月でした。
不思議なことに、それ以前には全く見えなかったのです。

はて、不思議な事があるものだと・・・。
しかし、私が本当に恐れおののいたのは、その葬儀の主、すなわちお亡くなりになった方の共通点に気がついたときでした。

交通事故、焼死、墜落死、感電死、殺人事件の被害者・・・・

その全てがいわゆる変死だったのです。

私は慌てて同僚にこれまでの山田一郎との関わりと、この発見のことを話しました。
すると、ある同僚が言いました。

「その人、警察官なんじゃない?」

なるほど!

そうです、それならわかります。
この『山田一郎さん』は非常に真面目な警察官で、取り扱った事件の被害者の葬儀に、律儀に顔を出しておいでだったのでしょう。
だから、変死の方ばかりの葬儀に名を連ねることとなったのです。
2年前の10月にこちらの地域を管轄する警察署においでになったのです。

これですべてが解決しました。

私が晴れ晴れしていると、受付に人が来た気配がしました。
春先に似合わない黒いスーツに、重苦しい黒いコートを着た紳士でした。

私は受付票への記載を求めました。
受付を済ませている間、私は別の同僚がふと言う言葉を耳にしました。

「でも、老婆の葬儀のときには、
 息子さんも奥さんも山田一郎に心当たりなかったのでしょう?
 それに、焼死した方のご葬儀のとき、
 最後に訪れたのは、女子大で一緒だった女性のグループだったんじゃなかった・・・?」

それを聞いた私がゾッとしてふと振り返ると、
 先程の男性はいらっしゃらなくなっていました。
  書かれた受付票には
「山田 一郎」
ご依頼内容には

「立花芳夫の葬儀について」

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