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Kalraの怪談

第15章 十五夜目🌕️:つたえてさん

【つたえてさん】

ミキと俺はいつものように長電話をしていた。

ミキとは大学で一緒のサークルで割と気が合い、付き合っているというわけではないが、こうして深夜の長電話をすることが多かった。

午前1時半も回ろうという頃だった。

「そういえば、最近またあったね、集団自殺」
ミキが言った。
「ああ、そうだな」
「ああいう人達ってなんなんだろうね。見ず知らず同士が一緒の車で練炭自殺、とかさ
 どういう気持なんだろう?」
「さあな・・・まあ、でも寂しいのかもね、一人で死ぬのは」
「気持わかるの?」
「ああ、わかるよ・・・俺も」
一度、集団自殺しかけたことがある、と言いかけて言葉を飲み込んだ。
さすがにそれは言えないか。

そう、2年前、進路に迷っていた俺は、ついフラフラと、そういう掲示板で自殺者募集に乗ってしまったことがある。
ただ、怖くなって、最後の最後で逃げ出してしまった。

報道によると、俺以外の3人は本当に死んでしまったようだった。
自分が悪いとは思わないが、本来は「自殺幇助」という罪に問われかねないらしい。
だから、言えない。

「俺も?もしかして、やりかけたことがあったりして?」
ミキが言う。
俺はぎくりとしたが
「んなわけねえだろう」
と、はぐらかした。

ねえ、とミキが続ける。
「知ってる?
 知らない人同士でも、一緒のことをしたり、一緒にいたりすると「縁」が生まれるって。
 一度生まれた縁はそう簡単に切れないんだって」
「あ、そうそう!縁といえば、【つたえてさん】って知ってる?」

「ツタエテさん?知らねえな」
「都市伝説みたいなものなんだけど、あんまり電話してこない知り合いから午前2時に電話がかかってくるんだって。
 それで、ひとしきり他愛ない話をするの。
 で、最後に、『ねえ、伝えてほしいんだけど』
 って言って、あることを伝えてくるんだって」

「あることって何?」
都市伝説のたぐいは嫌いじゃない。
ちょっと俺も興味があった。

「それがわからないの。
 でね、その電話を受けた人は、別の日の夜中2時にフラフラとスマホの連絡帳にある知人に連絡して、それで、雑談すると、『ねえ、伝えてほしいんだけど』って
 そのあることを伝えるんだって。
 でも、それを伝え終わるとどうしても何だったのか、思い出せないんだって」

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