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Kalraの怪談

第18章 十八夜目:死人の目

現場を荒らすことは通常許されない。第一非常識だ。
蹴ったことは分かったが、蹴られた頭部はSさんの影に隠れて見えなかった。

Sさんが、一瞬立ち止まり、ビクンと体を震わせたのが見えた。

当時俺はベテランSさんが、K先輩に対して怒りに打ち震えているんだ・・・と思っていた。

雷が落ちる!
そう思って身構えていた。

しかし、Sさんはしばらく立ち尽くし、黙っていた。
多分、時間にしたら5秒ほどだったろうが、慌ただしい現場で、しかも、非常識な行動の後にしては長く感じた。

『S係長?』

俺が後ろから声を掛けると、Sさんは、やっと気を取り直したようにみえた。

『ば・・・馬鹿野郎!!』
案の定、Sさんの雷が落ちた。

そんな事があったものの、事件処理は終わり、まあ、被害者は自殺、ということでかたがついた。

「だけど、本当に恐ろしかったのはこの後だった」

署に帰って、帰り支度をしている時、ロッカールームでたまたまSさんと一緒になった。俺が初めてで、ハードなご遺体扱いだったので、心配してくれたようだった。

『大丈夫か?』

そう声をかけてくれた。一応俺もプライドがあるので、結構やせ我慢気味だったが、
『大丈夫です』と応えたのだが、

Sさんは『そういう意味じゃねえ』と言ったんだ。

『あの・・・首・・・Kが蹴飛ばしたやつ・・・』

それに続く言葉を聞いて、俺は冷や汗が出た。

『蹴飛ばした瞬間、目が・・・開いて・・・俺を睨んだ』

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