
Kalraの怪談
第24章 二十四夜目:シオミ人形
「どう思う?」
F子は私に聞いてきた。
「若い女性が次に死ぬ・・・ってこと?」
私はおずおずと答えた。
「そう、だよね。しかも殴り殺されるんだ・・・。」
F子は下を向いた。F子の家の若い女性といえば、F子くらいなものだった。
「たぶん、いや、きっと、私、だと思うんだ」
F子は、おもむろに右手の袖を捲り上げた。そこには、幾つものミミズ腫れがついていた。
「それ・・・どうしたの?」
「母・・・なんだ・・・」
F子が言うには、F子の母はもともと、F子の家に嫁入りしたくなかったようだった。勝ち気で自分の自由にしたいという性格のF子の母にとって、旧家然としたF子の家は息苦しかったのだ。それでも、夫の手前、祖父や祖母が生きているうちは彼らに合わせていたようだったが、祖父と祖母がなくなってからは、次第に地が出てきたのだ。
F子の弟は、F子に比べて要領がよく、母親似ということもあり、F子の母は弟の方をよくかわいがっていた。祖父と祖母が亡くなってからはその溺愛がよりひどくなり、それにつれて、F子へのあたりがきつくなってきた。そしてとうとう、中学1年の冬ころからだろうか、暴力まで振るうようになってきたのだった。今では、気に食わないことがあったり、F子が少しでも口ごたえをしようものなら、目立たないところを木の棒で殴ったりもするようになっていた。
F子は何度家を出ようと思ったかしれない、と言うのだ。
「お父さんは、止めてくれないの?」
私が聞くと、F子は力なく首を振った。
「駄目。父は事業で手一杯なの。家のことを省みる余裕なんてない。ちょっと前までは、なんとか高校までは出て、そうしたら、家を出ようと思っていた。でも、あの夢を見た・・・。どうしよう、きっと、私は母に殴り殺されてしまうんだ・・・」
F子は唇を噛む。心なしか肩も震えている。本当に怖がっているようだった。
「ねえ・・・行ってみようよ、北の空き家に。蛙を助けたら、F子も助かるんでしょう?」
北の空き家、というのは、地図で調べ、当たりをつけて歩くと、存外すぐに見つけることができた。たしかに大きな家で、家の裏に回ると、涸れた井戸がある。中を覗くが、よく見えない。懐中電灯で照らしてみると、微かにヌメヌメと動くものが見えた。
F子は私に聞いてきた。
「若い女性が次に死ぬ・・・ってこと?」
私はおずおずと答えた。
「そう、だよね。しかも殴り殺されるんだ・・・。」
F子は下を向いた。F子の家の若い女性といえば、F子くらいなものだった。
「たぶん、いや、きっと、私、だと思うんだ」
F子は、おもむろに右手の袖を捲り上げた。そこには、幾つものミミズ腫れがついていた。
「それ・・・どうしたの?」
「母・・・なんだ・・・」
F子が言うには、F子の母はもともと、F子の家に嫁入りしたくなかったようだった。勝ち気で自分の自由にしたいという性格のF子の母にとって、旧家然としたF子の家は息苦しかったのだ。それでも、夫の手前、祖父や祖母が生きているうちは彼らに合わせていたようだったが、祖父と祖母がなくなってからは、次第に地が出てきたのだ。
F子の弟は、F子に比べて要領がよく、母親似ということもあり、F子の母は弟の方をよくかわいがっていた。祖父と祖母が亡くなってからはその溺愛がよりひどくなり、それにつれて、F子へのあたりがきつくなってきた。そしてとうとう、中学1年の冬ころからだろうか、暴力まで振るうようになってきたのだった。今では、気に食わないことがあったり、F子が少しでも口ごたえをしようものなら、目立たないところを木の棒で殴ったりもするようになっていた。
F子は何度家を出ようと思ったかしれない、と言うのだ。
「お父さんは、止めてくれないの?」
私が聞くと、F子は力なく首を振った。
「駄目。父は事業で手一杯なの。家のことを省みる余裕なんてない。ちょっと前までは、なんとか高校までは出て、そうしたら、家を出ようと思っていた。でも、あの夢を見た・・・。どうしよう、きっと、私は母に殴り殺されてしまうんだ・・・」
F子は唇を噛む。心なしか肩も震えている。本当に怖がっているようだった。
「ねえ・・・行ってみようよ、北の空き家に。蛙を助けたら、F子も助かるんでしょう?」
北の空き家、というのは、地図で調べ、当たりをつけて歩くと、存外すぐに見つけることができた。たしかに大きな家で、家の裏に回ると、涸れた井戸がある。中を覗くが、よく見えない。懐中電灯で照らしてみると、微かにヌメヌメと動くものが見えた。
